
今月は、ありがたいことに舞踏の映像撮影が二件ある。
「よし、ボランティアだと思って出かけますかね」と、半分やけっぱちな気分で家を出た。
いつもの“新幹線・外国人ラッシュ地獄”だけは避けたい。
そこで今回は、事前に自由席券を購入するという高度な戦術を採用。
自由席なら、ホームで並ぶだけでいい。
怒涛のトランク軍団に踏みつぶされる確率も下がる。
エスカレーターを上がりながら、ふと先日のJTBでの会話が頭をよぎった。
「自由席のチケットは扱いませんよ」
……なるほど、つまり指定席を買えと。
JTBで買ったら、いやがおうにも“のぞみの指定席”。
あれに乗った瞬間から、旅は誤算の連続である。
指定席車両に入ると、通路には外国人旅行者の巨大トランクが合法的に侵略している。
ときには指定席が取れなかった旅行者たちがデッキに固まって、そこだけ別の民族国家みたいになる。
その状態でトイレに行こうものなら、スラローム競技さながらだ。
「じゃあグリーン車は?」
こう思う人もいるだろう。
海外在住の外国人が買える“ジャパンレイルパス・グリーン”というものがある。
のぞみには乗れないが、それ以外のグリーン車は乗り放題。
つまり、グリーン車は外国人専用の避難シェルターだ。
なぜなら彼ら、普通に運賃を払えばのぞみにもガンガン乗る。
日本全国、どこでも、だ。
だから結局のところ、
「外国人と巨大トランクの隙間を通り抜けてトイレに行く」という試練からは逃れられない。
グリーン車であろうとなんであろうと、構造は同じ。
鉄道旅は、なんというか……面倒くさい。
人流を規制だの制度だので小難しくコントロールしようとする、そしてうまくゆかない。私はあの“せこい空気”が苦手だ。
普段は飛行機しか使わないので影響は最小限だが、たまに新幹線に乗ると精神的な摩耗が激しい。
そういうことをブツブツ考えながら、私は新幹線いつもの空いているこだま号で三河安城へ。
そこでK君の車にピックアップしてもらい、鳴沢の滝へ向かった。ヴォルヴォが快適に新東名を走り抜ける。
新幹線を降りると開放された気分で快適な旅がはじまる。