Creator's Blog,record of the designer's thinking

研究者の頭とクリエイターの感性で、書き、描き、撮り、制作しています

エッセイ1030.25年ぶりの美山――変わったもの、変わらないもの

京都府南丹市美山町(2025年11月29日) 京都府南丹市美山町(2000年6月) 京都・美山町を、11月末に再訪した。最初に訪れたのは25年前。美山が伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)に指定されたのは1993年だから、私が初めて見た頃にはすでに“保全の手”が入っ…

エッセイ1029.5本のレンズで到達した“最適解”

私の最適実践運用システム 映像用のレンズ選びというのは、本来「用途」と「運用スタイル」によってまったく変わる。だから世にあふれる“おすすめ機材”は基本的に成立しない。結局のところ、自分の映像撮影パターンに合わせて組むしかないわけで、今はこの5…

エッセイ1028.未来は当たらないから面白い――機材妄想シーズン到来

Sonyがα7Ⅴ登場の噂の1つ(https://www.minnacamera.com/mags/1480) 通例日記と言えば過去形で書くが、いま私は、予約投稿という“未来の自分への日記”を書いている。この記事は11月28日の執筆で、公開は12月14日。もはや未来予知のつもりで書いているが、だい…

エッセイ1027.受信料で作られる“非科学的ショー”――NHK地震報道

NHK午後6時のニュースの画面(2025年11月25日) NHKの地震報道を見るたびに思う。これ、本当に“公共放送”の仕事なのか?「科学的態度」より「とりあえず不安を煽る」が優先されているようにしか見えない。 2025年11月25日18時01分。熊本県・阿蘇カルデラ付近で…

エッセイ1026.機材か、錯覚か――誤った意思決定プロセスの研究

フィリピンの子供達と、子供のような親 人はなぜ、そしてどうやって機材を選ぶのか、そして選び間違えるのか。Google検索で引っかかったあるブログが、その典型的な「迷走例」として興味深かった。ここでは「某氏」として紹介しよう。 某氏はこう書き出す。 …

エッセイ1025.京都・四条の裏で出会った“寺とマンション”

四条河原町(2025年11月24日) 午後の四条通。その裏手――四条河原町の高島屋の裏口近くで撮った一枚である。私の関心は、嫁の後ろに見える赤い門構えのお寺だ。 「透玄寺」と記された表札と門のつくりだけを見ると、いかにも由緒ある寺院に見える。ところが門…

エッセイ1024.土地に触れて、土地に残らず

沖縄県那覇市牧志市場 (2022年12月07日) YouTube に映像を上げ続けて、いつの間にか 425 本になった。登録者は 69 人。長く放置していた映像が、いつのまにか 100 回ほど再生されていることもある。静かな数字だが、いまはそれで十分だと思っている。 過去の…

エッセイ1023.冷却ファンとクロップ問題──映像機材の現実的評価

FX3とα7S3。chatGPTに制作させた。手持ち画像が無いときは便利なchatGPTである。それはストック発想ではなく、社会の情報を集めてクリエイションするから無限大に生成できるというわけだ。 撮影機材のプロダクトデザインについて考える機会が多い。最近、ユ…

エッセイ1022.個別解としての生活情報と、一般化を志向する文章

京都市二条(2024年12月6日) 12月8日は、太平洋戦争開戦日、針供養、ジョン・レノン忌など、多義的な記念日として歴史・文化の両面に意味をもつ。一年前の私はちょうどフィリピン渡航の準備を進めており、当時の記録を振り返る機会があった。 その過程で、goo…

エッセイ1021.冬の入口にて

清水寺(2024年11月30日) 一年前の写真を開いた。淡い光が画面に残り、季節が同じ場所へ戻ってきていることを知らせていた。 寒さに弱くなり、冬が近づくと外出の機会は自然と減る。昨年は、京都が冬に入る前にフィリピンへ向かった。乾期の空気は乾き、風は…

エッセイ1020.機材更新についてのメモ

ChatGPTが生成した私好みのシステム 機材の更新を考えていた。どうやら SONY は AI を搭載した新機種を開発しているらしい。私が求める三つの仕様がいまの機種では一部満たされないため、「ここは新機種を待つべき」と静観していた。 ところが、chatGPT に画…

エッセイ1019.新幹線がつくる街の“表”と“裏”

新幹線豊橋駅の南側(2025年9月14日) このブログで“新幹線”と書けば、まず東海道新幹線のことだ。私はほかの新幹線には乗らない。北海道へ行くなら運賃のことを考えても LCC の飛行機が圧勝で、関西からなら二時間もあれば着いてしまう。早くて安いのなら、飛…

エッセイ1018.季節が冬へ沈む、その手前で

京都市・比叡山 この文章を書いている十一月二十一日、京都はちょうど紅葉の盛りを迎えている。街のどこかで葉が照り返し、どこかで散り、どこかで冬へと静かに身をゆだねているはずだ。 けれど、今年はその光景の中へ分け入ろうという気持ちが不思議と起き…

エッセイ1017.一枚の写真から、明治の貸座敷を立ち上げる

明治建築の3DCGによる復元過程 私の仕事は大きく三つある。①都市系コンサルタント②研究者として学術論文の制作③映像制作このうち報酬が出るのは最初だけで、②③はほぼ“研究ワーク”である。 いま追われているのは、その二つ目、学術論文の制作だ。 工学系の論…

エッセイ1016.秋を忘れた夕陽、年末へ沈む

新東名高速道路(2025年11月16日) 濃尾平野の西の端に沈んでゆく夕陽を眺めていると、季節が一段、深いところへ沈み込んでいく気配がする。秋は名乗りを上げる間もなく通り過ぎ、冬は急ぎ足でこちらに近寄り、もう肩を叩いている。 いま書いている11月21日の…

エッセイ1015.のぞみが型落ちで、こだまが最新という話、追記:ウクライナ戦争

新幹線N700系Supreme普通車のインテリア 東海道新幹線は「N700 系で統一されています」と、いかにも“きちんと管理しています”とすまし顔で言う。だが実際には N700、N700A、N700S(Supreme) の三種類。 最新の N700S は内装が別世界。天井は間接照明、全席コ…

エッセイ1014.セミアマ向けに媚び続けた日本、未来を拾った中国

日本のカメラと中国のカメラ 日本のデジカメは中国に完敗――ではなく、もはや対戦表にすら載っていない。 経済情報によれば、中国・深圳の Arashi Vision(影石創新科技)が手がける Insta360 の売上は770億円、株の時価総額は1兆4,000億円。創業者は1991年生…

エッセイ1013.外国人の“最初の失望”を担当する空港

関西空港の入国ゲート(2025年11月19日) 関西空港の入国ゲートは、外国人が最初に目にする“日本の顔”である。だが実際に見えるのは、高架道路の裏側という、なんとも情けない景色だ。「ようこそ日本へ」と言いながら、見えるのが“高架道路の腹”である。これを…

エッセイ1012.正確に写す気のない世界と、正確に撮ろうとする人間

スマホの“盛り色”が世界を安くする

エッセイ1011.建前と現実のあいだで街は歪む

便利に殺される街と、散財に向かう人々

Fieldwork1007.名づければ消えるものを、撮りにゆく

舞踏、新城市鳴沢の瀧、ダンサー岩下徹(2025年11月16日) 十一月、紅葉が山肌に火を灯しはじめる頃、私達は鳴沢の瀧へ向かった。瀧の脇にひっそりと設えられた簡素な舞台で、舞踏の撮影がある。 パフォーマーは四人。こちらはカメラ一台。その不釣り合いな静…

エッセイ1010.土着でもノマドでもなく、ただ揺れている都市の民

愛知県三谷祭 こんな風景こそ、日本の“伝統的な日本らしさ”というやつだろう。江戸時代の町角を思わせる商人風の男たち、ゴザの上には赤鬼、その奥にはしめ縄、そして神さま。みんな揃って神さまに向かって願い事をしている。まるで江戸のテーマパークだ。 …

1009.通路もデッキもトランクまみれの「のぞみ号」

愛知県新東名(2025年11月16日) 今月は、ありがたいことに舞踏の映像撮影が二件ある。「よし、ボランティアだと思って出かけますかね」と、半分やけっぱちな気分で家を出た。 いつもの“新幹線・外国人ラッシュ地獄”だけは避けたい。そこで今回は、事前に自由…

1008.紙箱にカツを入れられて、私は旅情を失った

京都駅・柿の葉寿司(2025年11月1日) 販売されている時刻表を見ると、欄外に各駅の“推し弁当”が載っている。あれが時刻表の小さな楽しみだった。いまも続いているのだろうか。もちろん WB時刻表では、そんな風流な情報は一切ないけれど。 私は鉄道といっても…

エッセイ1007.駅は進化しても、旅人の欲しいものは消える

京都駅新幹線ホームキオスク(2025年11月16日) 旅に出る朝――。さて、口の中でもすっきりさせたいな、と思ったら……フリスクが無い。しかもポケットティッシュも無い。この時点で、旅の快適度はすでにじわっと下がる。 以前、街のコンビニで探し回って列車を乗…

エッセイ1006.機材を決めかねながら、スタイルだけは決めている

ChatGPT作成画像、なんかゲージが実際の製品と少し違うんだけど… ——そろそろ、APSボディをフルフレームボディに更新したい、と。 もう何回同じことを書いたかわからない。だが、映像システムを完成させるには、ここが最後の“壁”なのだ。 条件に合うボディ、…

エッセイ1005.技術はまだ進化中、宴会はすでにスタンバイOK

DJI ワイヤレスミニマイク 新しいカメラを待ちながら、ピンマイクを買う話 (技術オタクの年末あるある) α7CⅡ、下がる。私の心も揺れる。 SONYのα7CⅡが、とうとう最安値になってきた。価格ドットコムのランキングも、気づけば4位。あの“トップ入り”状態から…

エッセイ1004.明治の残り香を歩く、京都モダン建築祭

京都府庁旧本館旧議事堂(2025年11月8日) 聖アグネス教会(2025年11月8日) 袛園甲部歌舞練場弥生会館(2025年11月8日) 秋の京都を歩くと、街のあちこちに“近代”の気配が残っている。石造りの庁舎、赤煉瓦の教会、昭和初期の劇場──。それらを一度に巡れるのが「…

エッセイ1003.京都駅、外国人で埋まる朝

荷物で囲まれた、回りは全て外国人。新幹線京都駅待合室(2025年10月) — 農村舞台へ向かう日の顛末 先日、農村舞台の舞踏を撮影に出かける朝、京都駅のコンコースはすでに人であふれていた。しかも、そのほとんどが外国人観光客だ。まるで空港の出発ロビーの…

エッセイ1002.フルフレームの臨界点――α7C IIか、FX3後継か…

後継機イメージ、映像用だからボディデザインは変わらないだろう。 フルフレーム機を、まだ持っていない — α7C IIか、FX3後継か… 繰り返しになるが、私はいまだに映像用のフルフレーム機を所有していない。主要な撮影はFX30でこなしており、Super35mmフォー…